【2018年日本リーグ決勝トーナメント・決勝戦(2日目第2試合):ビックカメラ高崎 VS トヨタ自動車 ~ トヨタ、延長8回サヨナラで優勝!塚本智名の神懸かり走塁とアボットの熱投で覇権奪取!】

ビックカメラ高崎
 000 0000 0…0-2-0
 000 0000 1…1-6-0
トヨタ自動車

(延長8回)

ビックカメラ高崎:●上野由岐子 - 我妻悠香
トヨタ自動車:○モニカ・アボット - 峰幸代
(本)
(三):内藤実穂(ビ)
(二)

<戦評>
 0-0で迎えた延長8回裏、無死二三塁。長﨑望未が完璧に捉えた打球はレフト正面への強いライナー。正直、「この打球では三塁走者は絶対にタッチアップは無理だな」と瞬間的には思った。
 あの場面、無死で二三塁なので三塁走者は緩い内野ゴロなら無理にでもホームを突ける場面。つまりバットに当たった瞬間にホームに向かって走るような気持ちも三塁走者は当然持っていたはず。
 そこであのレフトへの強いライナーだ。もし走者が一瞬、気持ちだけでも前掛かりになってホームに向かってしまっていたら、あの打球では絶対にタッチアップできなかただろう。
 しかし塚本智名は違った。打球がレフトに飛んだ瞬間に何の躊躇もなく瞬時に三塁にバック。そしてレフトの中西舞衣が捕球するとほぼ同時にワンタッチでサードベースを蹴って猛然と本塁へ。中西からの返球もほぼ完璧なストライク返球だったが、それこそコンマ何秒以下のギリギリのタイミングで塚本の足が本塁ベースに滑り込んだ。
 打った瞬間の判断、帰塁時の瞬時のベースタッチ、ホームへ走る脚力、そしてホームベースに真っ直ぐ滑り込んだスライディング。全てにおいて1ミリの隙もない完璧な走塁だった。正直あんな走塁を見たのはかつての名選手狩野亜由美くらいだ。優勝をたぐり寄せた、見事な塚本の神がかった走塁だった。

 もちろん打った長﨑望未も立派。上野の投球をレフトへ完璧なライナー。逆に完璧すぎて犠飛にはならないはずだったが、塚本が走塁で救ってくれた。
 その長﨑、7回表には2死一塁の場面で我妻悠香が放った大きな飛球をダイビングでキャッチするという見せ場も作った。捕っていなければ1点入って負けていただけにビックプレーなのは間違い。ただ世間的には「ピンチを救った超ファインプレー!」となっているが、実際はちょっと違う。あの2死一塁の場面で考えられないくらいの前進守備をとってしまっていたし、右打者の切れる飛球に対して逆向きに反転し目測を誤っている。もちろん最後は球際の強さを見せつけてダイビングキャッチでしっかりアウトにしたのは見事だが、あれを「超ファインプレー」と言ってしまっては長﨑に失礼だろう(笑)。本人も「いやー落とさなくて良かった~」とホッとしている気持ちが大きいはず。

 トヨタは最後はサヨナラで決めたが、この試合実は8回攻撃したうち6回も先頭打者が出塁している。それでいて走者を進められたのは8回を除くとパスボールと山下りらの犠打だけ。これだけ押しながら負けていたら実に後味の悪いことになっていたが、勝ったことで何もかもが帳消し。やはりシーズンの最後は勝つことで全てが報われる。

 逆にビックカメラ高崎は押されながらも上野由岐子がしっかり抑えて延長に持ち込む理想的な展開だっただけに、最後は相手の好走塁にやられた。ただ上野も意外とサバサバしていたようだし、他の選手や監督も今年はやりきった感があったのかも。

 決勝トーナメント第1試合目でのこの両者の戦いのレポートで「レベルは高いが見ていて面白くない」と書いてしまったが、さすがに決勝戦でこういう展開となると、やっぱり面白い。今年も歴史に残る名勝負を見せてくれた。
 そして1年間、常にレベルの高いソフトボールを見せてくれたこの両チームには、心から感謝をしたい。

<優勝をたぐり寄せる神懸かり走塁を見せるトヨタ自動車の塚本智名>

<本塁を、そして優勝を奪い取った塚本智名の走塁>

<レフトに完璧な打球。ライナーでのサヨナラ犠飛を放つ長﨑望未>

 

 


【ビックカメラ高崎:先発と交代選手】
1(D):森さやか
2(9):糟谷舞乃
3(6):市口侑果
4(5):山本優
5(8):大工谷真波
6(3):内藤実穂
7(2):我妻悠香→(走)川井菜月→(再2)我妻悠香
8(7):中西舞衣
9(4):藤本麗→(打)北口美海→(再4)藤本麗
FP(1):上野由岐子

【トヨタ自動車:先発と交代選手】
1(7):塚本智名
2(5):鈴木鮎美
3(9):長﨑望未
4(8):山崎早紀
5(6):渥美万奈
6(D):アリソン・アギュラー
7(4):坂元令奈
8(3):山下りら
9(2):峰幸代
FP(1):アボット


【1回表:ビックカメラ高崎~0点】
:右飛
糟谷一二塁間右前打
市口:右飛
山本:凡退

【1回裏:トヨタ自動車~0点】
塚本二内安
鈴木:バント一ゴロ併殺打(3-6-4)
 ※一塁は間一髪
長﨑:投ゴロ

【2回表:ビックカメラ高崎~0点】
大工谷:見逃し三振
内藤:遊ゴロ
我妻:右飛(ハーフスイング空振りを一つ見逃してもらったが)

【2回裏:トヨタ自動車~0点】
山崎:空振り三振
渥美:死球
アギュラー:空振り三振
坂元右前打(一三塁に)
 ※坂元が二盗で二三塁
山下:空振り三振(高めハーフスイング)

【3回表:ビックカメラ高崎~0点】
中西:見逃し三振
藤本:セフティバントファール・3バント失敗三振
:四球
糟谷:中直

【3回裏:トヨタ自動車~0点】
左前打(クリーンヒット)
 ※パスボールで峰は二塁へ
塚本:空振り三振
鈴木:空振り三振
 ※二塁テンポラリー走者に鈴木
長﨑:三飛(ドン詰まり)

<先頭の峰幸代がレフトにクリーンヒットを放つ>

 

【4回表:ビックカメラ高崎~0点】
市口:二飛(ツマリ)
山本:二ゴロ
大工谷:空振り三振(ハーフスイング)

 

【4回裏:トヨタ自動車~0点】
山崎:二ゴロ(初球)
渥美:四球(ストレート)
 ※渥美が二盗。一旦アウトの判定もオブストラクション適用
アギュラー:一邪飛
坂元:左飛

【5回表:ビックカメラ高崎~0点】
内藤右中間エンタイトル二塁打
我妻:空振り三振
 ※バントを二つファールし最後バスターするも三振
中西:見逃し三振
(打)北口:空振り三振
 ※北口に代わり藤本が再出場

【5回裏:トヨタ自動車~0点】
山下一二塁間右前打
:二ゴロ・守備妨害
 ※セカンド前の緩いゴロ、一走の山下がセカンド藤本と激突。普通に避けられる打球。走塁ミス
塚本:左飛
 ※一塁テンポラリー走者に塚本
鈴木:見逃し三振

<普通の緩い二ゴロに対してセカンドとぶつかってしまった一塁走者の山下りら。これは凡ミス>

【6回表:ビックカメラ高崎~0点】
:三邪飛
糟谷:遊飛
市口:空振り三振

【6回裏:トヨタ自動車~0点】
長﨑二左内安
 ※長﨑、ジャンプして腹から落ちる下手なヘッスラで腹が痛い
山崎:空振り三振
渥美:見逃し三振
アギュラー:遊ゴロ

【7回表:ビックカメラ高崎~0点】
山本:一ゴロ
大工谷:四球(ストレート)
内藤:中飛
我妻:右飛
 ※ライト後方の飛球、長﨑が下がって振り返るときに目測を誤るも、最後は倒れ込むようにしてなんとかキャッチ

<我妻悠香の大きな飛球は前進守備で目測を誤った長﨑望未だったが、なんとか最後はダイビングキャッチ>

【7回裏:トヨタ自動車~0点】
坂元:四球(3-2から。全て見逃し)
山下:三犠打(二塁)
:空振り三振(粘るも)
塚本:見逃し三振(粘るも3-2から)

【8回表:ビックカメラ高崎~0点】
 ※二塁走者に代走の川井
中西:バント一ゴロ三封(走者一塁)
 ※ファースト正面にやや正直な強い打球。山下のダッシュも良かった
藤本:投犠打(二塁)
 ※森の打席、2-1からワイルドピッチで走者三塁
:四球(一三塁)
糟谷:右飛(ツマリ)

<中西舞衣の犠打はトヨタ自動車のファースト山下りらが好プレーで三塁アウトに>

<期待の糟谷舞乃だったが無念>

【8回裏:トヨタ自動車~1点】
 ※二塁走者に塚本
鈴木投前安(ボテボテが幸い)
 ※鈴木が二盗で二三塁
長﨑左直犠飛
 ※三走、塚本の神走塁でサヨナラ!!!

<8回裏、無死二塁から鈴木鮎美が上手く転がして投前安打。さらに二盗で二三塁。この場面を作れたのも大きかった。長﨑望未はこれでかなり楽になれた>

【試合終了】

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