【今年の投手新人賞について】
今年の新人賞はデンソーの2年目、辰巳舞衣。昨年(2017年)も26回3分の2を投げ1勝3敗、防御率3.41の成績を残してはいたが、2年目の今年さらに飛躍し防御率1点台で5勝をあげたことが認められての受賞となった。
過去の受賞者と比較すると、成績だけを見れば岡村奈々や濱村ゆかりなどの日本代表レベルの選手と同等かそれ以上。もちろん、投球回数が少ないとどのチームを相手に投げてきたかで成績が大きく左右されるので比較は難しいが、規定回数近くを投げて1点台の防御率なのは間違いなく、十分に立派な、新人賞に相応しい成績と言えるだろう。
正直シーズン前は「今年は原奈々(デンソー)で鉄板の年かな」と予想し、事実開幕戦でも日立を相手に先発完投勝利と華々しいデビューを飾り、その後も好投は続けたがそれが結果には表れなかった。比較的に「原を上位チームにぶつけ、辰巳を下位チームに投げさせる」という傾向があったため、原が割を食ってしまった形になったのだが、そこはデンソーのチーム方針でもあったので仕方が無い。まあ「お姉さんでしょ、我慢してね」、というところか(笑)。
実はその「どのチームを相手にして投げてきたか」が非常に大きな意味を持っているのが、シオノギ製薬の千葉咲実。辰巳に匹敵する投球回数、防御率を残しながらも勝ち星は1勝止まり。なので新人賞レースにはスタートにも立てなかったかも知れないが、しかし投球内容的には上回っているうえに且つ投げた相手が上位チームばかり。この辺は詳しく見てみないと分からないので別の記事で検証したい。
なお、過去の新人賞投手の成績は以下の通り。
1994年~石川多映子 (高卒:6勝3敗、防御率0.54)-日立
1995年~該当者なし
1996年~勢理客仁美 (高卒:3勝1敗、防御率0.54)-豊田自動織機
1997年~山崎あゆみ (高卒:5勝1敗、防御率0.15)-シオノギ製薬
1998年~該当者なし
1999年~高山樹里 (大卒:5勝1敗、防御率0.83)-豊田自動織機
2000年~遠藤有子 (高卒:5勝7敗、防御率1.45)-大徳
2001年~上野由岐子 (高卒:79.3回、10勝3敗、防御率0.79)-ルネサス高崎
2002年~増淵真理子 (大卒:128回、10勝7敗、防御率1.26)-デンソー
2003年~山崎萌 (高卒:53.3回、4勝3敗、防御率0.79)-日立
2004年~江本奈穂 (高卒:54.3回、5勝1敗、防御率0.64)-ミキハウス
2005年~該当者なし
2006年~該当者なし
※以降、2年目の選手まで選考対象に規約改正(2007年は例外的に2人選出)※
2007年~鈴木麻美 (高卒:70.3回、3勝6敗、防御率2.79)-靜甲
2007年~瀬川絵美 (高卒:64.3回、5勝3敗、防御率0.63、※2年目)-日立
2008年~山根佐由里 (高卒:50.0回、5勝3敗、防御率1.55)-レオパレス21
2009年~該当者なし (新人および2年目の投手に勝利投手なし)
2010年~井俣茉莉 (高卒:27.3回、3勝0敗、防御率0.51)-大鵬薬品
2011年~森真里奈 (高卒:70.0回、6勝2敗、防御率1.10、※2年目)-太陽誘電
2012年~中野花菜 (高卒:18.0回、2勝0敗、防御率0.38)-ルネサス高崎
2013年~小薗美希 (高卒:52.3回、5勝2敗、防御率2.01)-日立
2014年~泉礼花 (大卒:79.0回、6勝4敗、防御率1.95)-日立
2015年~濱村ゆかり (高卒:36.3回、6勝1敗、防御率2.70、※2年目)-ビックカメラ高崎
2016年~田内愛絵里 (高卒:20.3回、3勝1敗、防御率3.45)-トヨタ自動車
2017年~岡村奈々 (大卒:58.3回、4勝4敗、防御率2.88)-日立
2018年~辰巳舞衣(高卒:48.3回、5勝1敗、防御率1.59、※2年目)-デンソー
<新人賞の辰巳舞衣(デンソー,第4節刈谷大会の織機戦で)>
<原奈々(デンソー,開幕節でデビュー戦延長完投勝利)>
<千葉咲実(シオノギ製薬,第10節デンソー戦で6回1失点も負け投手>
以下に今年の新人投手の主な成績をあげた。新人賞を獲得した2年目の辰巳舞衣と、1部初参戦で実質新人投手の2年目の竹原由菜についても比較として掲載した。
【投球回数-試合数(全新人投手)】
48.3-12 辰巳舞衣(デンソー,2年目)
45.0-10 竹原由菜(大垣ミナモ,2年目)
43.7-11 千葉咲実(シオノギ製薬,新人)
37.0- 8 原奈々(デンソー,新人)
20.3- 9 勝股美咲(ビックカメラ高崎,新人)
17.7- 7 稲垣葵衣(Honda,新人)
3.0- 1 曽根はん奈(太陽誘電,新人)
1.0- 1 並木あかね(SGホールディングス,新人)
※今年は入団した投手6人全員に登板機会があった
(昨年の新人賞岡村と1年目の辰巳)
58.3-17 岡村奈々(日立)
26.6-9 辰巳舞衣(デンソー)
【防御率(全新人投手~括弧内は投球回数)】
0.00( 3.0) 曽根はん奈(新)
1.59(48.3) 辰巳舞衣(2年目)
1.76(43.7) 千葉咲実(新)
2.41(20.3) 勝股美咲(新)
2.84(37.0) 原奈々(新)
4.67(45.0) 竹原由菜(2年目)
5.15(17.7) 稲垣葵衣(新)
7.00( 1.0) 並木あかね(新)
※辰巳と千葉の40回以上を投げて防御率1点台は日本リーグ全体でもトップクラスの数字
(昨年の新人賞岡村と1年目の辰巳)
2.88(58.3) 岡村奈々
3.41(26.6) 辰巳舞衣
【投球数】
926 竹原由菜(2年目)
736 辰巳舞衣(2年目)
694 千葉咲実(新)
606 原奈々(新)
443 勝股美咲(新)
351 稲垣葵衣(新)
44 曽根はん奈(新)
17 並木あかね(新)
※大垣ミナモの竹原由菜は僅差接戦から大差の敗戦処理まで、本当によく投げてくれた
(昨年の新人賞岡村と1年目の辰巳)
1018 岡村奈々
487 辰巳舞衣
【勝-敗】
5-2 辰巳舞衣(2年目)
2-4 原奈々(新)
2-0 勝股美咲(新)
1-3 辰巳舞衣(新人時代)
1-4 竹原由菜(2年目)
1-4 千葉咲実(新)
0-2 稲垣葵衣(新)
0-0 曽根はん奈(新)
0-0 並木あかね(新)
※原と千葉はもっと勝ってもよかったが対戦相手が上位チームだったので割を食った。来年は稲垣の初勝利を見たい
【被打率(対戦打者数、全投手)】
0.100( 11) 曽根はん奈(新)
0.222(161) 原奈々(新)
0.233(181) 千葉咲実(新)
0.236(201) 辰巳舞衣(2年目)
0.247(206) 竹原由菜(2年目)
0.298( 99) 勝股美咲(新)
0.351( 86) 稲垣葵衣(新)
0.400( 5) 並木あかね(新)
※原、千葉、辰巳、竹原の4人の被打率は十分及第点
(昨年の新人賞岡村と1年目の辰巳)
0.262 辰巳舞衣
0.285 岡村奈々
【K/BB(20回以上)】
2.55(43.7) 千葉咲実(新)
1.82(20.3) 勝股美咲(新)
1.21(48.3) 辰巳舞衣
1.00(37.0) 原奈々(新)
0.85(45.0) 竹原由菜
※千葉の2.55は立派な数字
(昨年の新人賞岡村と1年目の辰巳)
1.20(58.3) 岡村奈々
0.80(26.6) 辰巳舞衣
【奪三振数(1試合当たり奪三振率)】
28(4.4) 竹原由菜(2年目)
28(4.5) 千葉咲実(新)
20(6.9) 勝股美咲(新)
17(2.5) 辰巳舞衣(2年目)
14(2.6) 原奈々(新)
13(3.4) 辰巳舞衣(新人時代)
10(4.0) 稲垣葵衣(新)
3(7.0) 曽根はん奈(新)
1(7.0) 並木あかね(新)
※さすがに左投手の二人が奪三振でトップ
(昨年の新人賞岡村と1年目の辰巳)
28(3.4) 岡村奈々
13(3.4) 辰巳舞衣