【強いチームが負ける時~2010沖縄インターハイ・木更津総合v.s.小林西】
選抜、全国私学と優勝し、続くインターハイ、国体と、今年の全国大会の四冠を狙う木更津総合が、二回戦で宮崎の小林西に敗れ早々に姿を消した。
この試合、優勝候補筆頭の木更津に対し、スタメンに三年生が一人だけの若い小林西が挑む構図。普通にやれば勝てるという油断から接戦になり焦りが生じ、実力的には劣るチームに強豪が敗れるという典型的な試合だった。
~試合は意外にも0-0のまま延長へ~
試合は序盤、完全に見下ろして戦った木更津に対し必死の小林西だったが、終盤は完全に形勢が逆転。焦って空回りの木更津と押せ押せの小林西になる。
しかしその小林西も若い。0対0で迎えた7回裏、先頭の一年生がヒットで出てサヨナラのチャンスも、サインミスをして有り得ない単独スチールを試みて失敗、大事な走者を殺してしまう。その次の打者がレフトオーバーを放ったこともあり痛すぎるサインミスだった。
とまれ試合前は木更津の楽勝かと思われた試合が延長タイブレイカーにもつれ込む。
~流れは必然的に小林西へ~
ここまで、コントロールはいいがさほど球速のない小林西の沖縄出身一年生投手竹原に対して、強振しては凡フライの山を築き上げる木更津打線。
木更津の監督の怒りとイライラも頂点に達し、ますます打者にプレッシャーを与えては萎縮させ焦りを募らせ、どんどん相手の術中にはまる悪循環。
一方の小林西打線、最初は緊張してまともなスイングもできなかったが監督の「ビビらずに3つ振って来い!」の指示を実行しているうちに徐々にバットに当たりだし、7回2死2塁からの代打キャ
プテン益丸の一打など、レフトフェンスギリギリの大飛球でサヨナラかと思われた当たりだった。
そして延長に入ってもその流れは変わるどころか、更に木更津にとっての逆風となる。
~延長に入りさらに流れが傾き…~
8回表の木更津の攻撃はなんと、無死2塁から2打者連続で不正打撃でアウトという信じられないミス。
1人目は何度もセフティを試みるもその度に足がボックスから出る(もうクセなのか?)。そしてバットに当たりファールになった時点で不正打撃アウト。次の打者はスラップでショートゴロになったがこの打者も足が出ていたということで記録は不正打撃アウトになった。結局次打者も倒れ無得点に終わってしまう。
そして小林西に傾いた流れが8回裏に結末を迎える。
先頭打者がショートに高いゴロで走者を進め、2死となって打席に入ったのは小柄な9番打者。どうみても中学生にしか見えない非力なスラッパーの左打者で、とても外野に打球が飛びそうにもない。少なくとも引っ張ってライトには絶対に飛ばない。
そこで木更津は大胆なシフトを敷く。
まず、セカンドを二塁ベース左に置き、ショートを三遊間に、つまり三遊間に野手を三人配置し、ライトがセカンドの守備位置にと、完全にライトを空けて左側を固めた。
そして計算通り三遊間を守っていたショート真正面のゴロに打ち取ったが、やはりうまく行かない試合というのは結局最後までうまく行かないものだ。
ショートからの送球を受けるため前進守備のファーストが戻るが、やや一塁ベースに入るのが遅れる。それを見たセカンドを守っていたライトも、急いでベースに入る。
ただファーストがなんとか戻れたことから、セカンド(ライト)が一塁ベースに入らず身を引いたところに、不幸にもショートが送球してしまったのだ。
ショートからの送球を受けたセカンド(ライト)がすぐさまベースを踏みに行ったが、時すでに遅し。一瞬早く打者走者がベースを駆け抜け、その間に三塁走者がサヨナラのホームを踏んだ。
~強いチームが負けるとき~
いうまでもなくルネサスの峰幸代や大久保美紗、黒川春華をはじめ、ソフトウェアにも数人、他にもホンダや元レオパレスなど、一部リーグに大勢の選手を送り込んできた名門中の名門・木更津総合。方や二部で打ちまくっていた元大鵬薬品の松山夏美くらいしか有名なOGを持たない小林西。
しかもこの大会でもジュニア日本代表を何人も抱える木更津と比べ、一二年生が主体の小林西だったが、結果は上で見てきた通りだった。
時に圧倒的な力差があってもそれを覆すことがあるが、その中身にこんなにいろいろゲームを左右するポイントや信じられないようなプレーが詰まっているのがソフトボールの良さであり、またリーグに比べかなりレベルは低いが必死さでは負けない高校生にこそ演出できるドラマなんだろとも思う。
高校野球ももちろん面白いが、同じようにソフトボールのインターハイもドラマがが詰まっていて本当に面白い。
~追記~
普段は日本リーグの記事限定で、いたいけな高校生が健気にボールを追いかける姿に対してあーだこーだ言うのは避けてきたのだが、この試合に関してはやはり試合の中身を書きたくなった。
では、最後に。
「木更津が勝った?」
「小林が勝ったさ~!」
「あい!?はっさみよ~!」
~追記2~
その小林西、次の試合も勝って準々決勝まで残り、優勝した星野に1-2で敗れた金光藤蔭にタイブレイカーで1点差負け。若いチームだけに、来年が本当に楽しみだ。