【2010年決勝トーナメントにむけて~その2:トヨタ vs ルネサス】

【2010年決勝トーナメントにむけて~その2:トヨタv.s.ルネサス】

11月6日(土)
 10:30:豊田自動織機 vs 日立ソフトウェア…(1)
 13:00:トヨタ自動車 vs ルネサスエレクトロニクス高崎事業所…(2)
11月7日(日)
 10:00 (1)の勝者 vs (2)の敗者…(3)
 13:00 (2)の勝者 vs (3)の勝者

【ページシステム第2試合、1,2位対決~トヨタ自動車v.s.ルネサスエレクトロニクス高崎事業所】

~因縁のライバル対決・決着の時へ~
 この試合ほど楽しみな戦いもない。総力戦となる翌日の決勝戦以上に両チームの戦略が見ものなこの初日の1位2位対決の方がある意味面白いのではないか。
 ここ2年で急に最大のライバル対決となったこのトヨタとルネサスの両チームだが、昨年の全日本総合から歴史に残るような戦いを繰り返してきた。2009年総合大会では延長タイブレイカーにもつれ込み一度はトヨタが勝ち越すも最後は乾絵美がサヨナラ満塁本塁打。2009年リーグ決勝戦では2-0と最終回ツーアウトまでトヨタがリードしながらまたしてもルネサスが三科真澄と乾のヒットで逆転勝ち。ともにモニカ・アボットが2日間で3連投した最後の最後に打たれたものだった。
 今年に入るといきなり4月の開幕節で激突した。その試合は延長タイブレイカーでトヨタが渡邊華月のヒットで勝利したが、因縁じみているのはむしろその後である。9月の全日本総合ではともに順当に勝ち進み、織機、Hondaとならんで最終日のベスト4まで駒を進めた。同時刻から行われた準決勝でまずはトヨタが織機に3-0で勝利し、予想通りルネサスとトヨタの因縁の決勝戦になるかと思いきや、2週間前のリーグ戦でもルネサスを破りこの大会も快進撃を続けてきたHondaがまたしても大金星。延長タイブレイカーで田中清香が上野由岐子から逆転サヨナラエンドランを決めて準決勝でルネサスを破ってしまったのだ。これでルネサスとトヨタの因縁の激突が未対決に終わると、次に両者が対戦したのがリーグ戦の最終節山梨大会の最終日。昨年から連勝を続けてきているトヨタが初の全勝1位通過を狙うかと思われたが、トヨタは前日の大鵬薬品戦にアボットを投入しルネサス戦では登板を回避。対するルネサスも上野が登板を回避。互いにエースを温存し、リーグ戦より決勝トーナメントでの対決を意識した手の内を見せない戦いに終始したのだった。上野の投球や最強チーム同士の戦いを見たかった山梨のファンはがっかりしただろうが、とにかくリーグ戦は捨ててでもこの決勝トーナメントの試合に賭ける意気込みの表れだったと言えるだろう。
 そしてこの試合である。何が何でも勝ちたいトヨタに対してルネサスがどう出てくるか。トヨタは負ければみたびアボットの三連投が強いられるわけで打線がよほど奮起しない限り同じ過ちを繰り返してしまう可能性もある。したがって100%アボットの先発で100%の勝利を目指してこの試合に全力をかけてくるだろうが、したたかなルネサスはどうか。
 初日の午前中の第1試合で試合巧者の織機ではなく相性のいいソフトウェアが勝利したような場合、この午後のトヨタとの対戦では再び上野を温存しメラニー・ローチの先発で臨み、勝てば幸い、負けても翌日に上野の連投で一気に勝負を決めに来る戦略もあるかも知れない。つまり「少なくとも上野の3連投だけは避ける」という戦い方なわけである。もしそこまで見越してローチを獲得していたとするならば、空恐ろしいまでの戦略眼だ。
 ただもちろんさすがの策士宇津木麗華監督とはいえそこまでの冒険はせず、上野先発の王道でくる可能性が高いだろうが、今年の両者の戦い、腹の探り合いを見ていると結局は最後の最後に勝てばいいという戦略で全てをそこに賭けてくるはずで何が起きるか予測できない。そういう意味でもすごく楽しみなこの初日の対戦なのだ。
 そして2日目最終戦。いかにソフトウェアと織機が強豪で試合巧者とはいえ、やはり短期決戦では上野とアボットのいるこの両チームが有利だ。全日本総合ではルネサスの連覇が止まり、トヨタが優勝したが、とはいえルネサスの連覇の夢を破ったのはHondaでありトヨタとしては大いにアシストしてもらっての優勝だった。
 今回はとにかく両者が決勝戦で激突し、そしてそこでトヨタがルネサスに完勝して初めて、トヨタナインやトヨタファンとしては昨年の雪辱を果たした気持ちになれるだろう。

 

<チーム打撃成績>
トヨタ自動車(打率0.336、105打点、21本塁打、32二三塁打、67三振)
ルネサス高崎(打率0.289、95打点、15本塁打、34二三塁打、77三振)

 

~ルネサスエレクトロニクス高崎事業所~
 昨年までのルネサスは上野をはじめ多くの代表選手、好選手が揃い、個人的には憎らしいまでの強いチームでしかなかったが、今年のルネサスは正直、見ていて非常に面白い。山本優や峰幸代といったバリバリの代表レベルの選手も確かにいるのだが、中野久美のようないぶし銀選手が打点王を獲得したり、終盤になって橋本留美が出て活躍しだしたり、移籍してきた蔭山遥香がしぶい活躍を続けたり、下位打線において関友希央、城戸絵理沙、西川友理といった似たようなタイプの選手が日替わりで活躍したり、もちろん大久保美紗も相変わらずしぶといしと、いろんなタイプの選手がそれぞれ仕事をしている感じだ。
 でもそんなチームで個人的に大好きなのが4番の岩渕有美。五輪のメダリストでありながら常にいつもニコニコしていて腰が低く本当に人柄の良い選手なんだろうと思う。そして最強チームルネサスの4番でありながら、確かにいいところでもよく打つが、時々簡単に三振に倒れたりとどこかプレーに愛嬌がある。
 そんな今年のルネサスにおいて何より大きいのが打者・上野の存在。僕は個人的にたとえ投手だろうが打てる選手がしっかり打席に立ってくれるのが好きで、それを実行してくれているのが今年のルネサスを面白いチームと感じている最大の理由かもしれない。もともと唯一応援していた西舘果里一人が絶不調という何とも言い難い状況ではあるのだが、正直今まではあえて嫌ってきたこのチームの魅力にようやく気付いた2010年といったところか。ただ日本代表での上野投手の不参加問題は話は別。それはそれでまだ批判の手綱を緩めるつもりは全くない(笑)

 

~トヨタ自動車~
 昨年決勝戦でのルネサスの大逆転勝利で、もっとも人生が変わった選手が鈴木美加だろう。正確に言えば、「変わる機会を失った」となるのかも知れないが。
 昨年9月の全日本総合の決勝戦で大逆転負けをしたトヨタが、11月のリーグ戦決勝の、しかも社長観戦の御前試合で上野を破ってリベンジ優勝したとなればこんなに大きなニュースもなかった。そしてその最大の立役者として、完封したアボット以上に上野から決勝のタイムリー二塁打を放った鈴木美加の名が歴史に刻まれるはずだったのだ。それが大久保執念の四球と三科、乾の勝負強さの前にチームが屈し、鈴木の名前がクローズアップされることもなくなった。今年は日本代表の追加候補に選ばれるなど実力は認められだしもしたが、肝心の成績の方はさっぱりで2割台前半の打率に2本塁打と、ソフトウェアのライバル林に大きく水をあけられた。チーム内での競争でも、同じく代表レベルの好選手である渥美万奈にセカンドのレギュラーを奪われることも多かった。いや試合数、打席数ともに渥美の方が多いことからレギュラーは奪われた形になっているのだ。常々「守備がヘタクソ」と酷評し続けてきたこの二人だが、その守備に関しては失策数が渥美が1に鈴木がゼロと完全に克服した。ただ打撃では渥美が4割6分7厘と実力通りの結果を残しながら鈴木がその半分以下と信じられない成績。とにかくこの二人には将来の日本代表を背負ってほしいという期待からついついいつも辛口になるが、この決勝トーナメントでは全てのソフトボールファンに名前が刻みこまれるような派手な活躍を期待したい。特に鈴木美加には、去年手に入れかけたヒロインの座を、今年こそしっかりと手に入れてもらいたい。鈴木美加と渥美万奈の可能性は無限大なのだ。
 さてトヨタの話題になるとついつい鈴木と渥美に話が行ってしまうのだが、それくらい逆に言うと他の選手に心配がないということ。今年は藤崎由起子が打点王、藤野遥香が打率2位とベテラン勢が最高の成績を残し、首位打者ナターシャ・ワトリーに大ベテラン伊藤幸子、小野真希と前薗理恵の名外野手コンビ、日本代表5番打者の坂元令奈に、守備では日本一かもしれない渡邊華月と文句のつけようがない布陣が揃っている。もちろんこのメンバーは昨年から不動で、昨年の開幕前から「完ぺきな布陣が揃った」と強調してきたが、今年は開幕前から「全勝も狙える」と言い続けてきたほどさらに完成度が増した。ただそんなチームでも昨年優勝できなかったのは何かが足りなかったわけで、今年はその「何か」を埋めるために1年の全てをソフトボールに捧げてきた。
 夏の北関東遠征、足利市長杯が終わった後、翌々日に栃木県の真岡に移動しHondaと2試合練習試合を行ったトヨタであったが、試合後すぐにHondaのグランド外周を借りてダッシュを繰り返したりと延々と体力強化の基礎練習を行っていた。ホームグランドのトヨタスポーツセンターにも1部2部を問わず多くのチームを招いては練習試合を繰り返し、積極的に遠征にも出かけてはその合間にも体力強化を欠かさない。もちろん他のチームも負けてはいないだろうが、少なくとも今年のトヨタは、1年のすべてをソフトボールに捧げ、リーグ戦で優勝するために必要なことすべてを行ってきたという自負はあるはずだ。リーグ開催時に他会場の全試合にスコアラーを派遣したのもその一環で、チームとしてできることもすべてやってきた。今年のトヨタには優勝しなければならない、いや当然優勝するであろう十分な理由がある。


 

<トヨタ自動車>
~予想スタメン~
1(6):ナターシャ・ワトリー(打率0.441、16打点、8本塁打、6二三塁打、4三振)
2(8):前薗 理絵(打率0.263、10打点、2本塁打、2二三塁打、7三振)
3(9):藤野 遥香(打率0.424、11打点、1本塁打、7二三塁打、7三振)
4(3):伊藤 幸子(打率0.311、7打点、1本塁打、4二三塁打、7三振)
5(5):坂元 令奈(打率0.359、11打点、2本塁打、2二三塁打、8三振)
6(D):藤崎由起子(打率0.265、19打点、4本塁打、1二三塁打、8三振)
7(7):小野 真希(打率0.322、9打点、0本塁打、7二三塁打、9三振)
8(4):鈴木 美加(打率0.219、7打点、2本塁打、1二三塁打、8三振)
9(2):渡邉 華月(打率0.250、6打点、0本塁打、1二三塁打、8三振)
FP(1):モニカ・アボット(打率0.500、2打数1安打、笑)
~その他おもな選手~
PH:渥美 万奈(打率0.467、4打点、1本塁打、1二三塁打、1三振)
PH:山崎 早紀(打率0.500、4打点、0本塁打、0二三塁打、0三振)

 

<ルネサスエレクトロニクス高崎事業所>
~予想スタメン~
1(5):山本  優(打率0.354、16打点、6本塁打、7二三塁打、5三振)
2(3):大久保美紗(打率0.210、12打点、2本塁打、4二三塁打、9三振)
3(2):峰  幸代(打率0.288、6打点、0本塁打、5二三塁打、5三振)
4(8):岩渕 有美(打率0.306、6打点、0本塁打、4二三塁打、7三振)
5(6):蔭山 遥香(打率0.400、10打点、1本塁打、3二三塁打、1三振)
6(1):上野由岐子(打率0.230、11打点、2本塁打、1二三塁打、17三振)
7(7):中野 久美(打率0.328、19打点、3本塁打、5二三塁打、13三振)
8(D):橋本 留美(打率0.280、4打点、1本塁打、4二三塁打、4三振)
9(4):西川 友理(打率0.333、7打点、0本塁打、1二三塁打、1三振)
FP(9):城戸絵理沙(打率0.179、1打点、0本塁打、0二三塁打、6三振)
~その他おもな選手~
控え:関 友希央(打率0.240、1打点、0本塁打、0二三塁打、3三振)

 

<今年のルネサス最大の戦力アップは“打者”上野だ>


<どちらが活躍しヒロインになれるか。ある意味トヨタのカギを握る鈴木と渥美の若手コンビ>

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