【2011年開幕節第5試合(2日目):Honda v.s. デンソー~強力打線が爆発し染谷も完封右でデンソーが完勝】
Honda 000 0000 …0
デンソー 000 052x …7
Honda:●パウリー、金尾-島崎、武藤
デンソー:○染谷-伊藤
【先攻:Honda】
1(7):平林真由子
2(9):大橋美奈
3(3):田中清香
4(2):島崎望
5(8):芝﨑恵梨
6(6):又吉薫
7(4):中村瞳
8(5):加藤恵理
9(6):小川絵里加
FP(1):サラ・パウリー
【後攻:デンソー】
1(8):増山由梨
2(6):松本尚子
3(4):今泉早智
4(2):伊藤綾香
5(D):メーガン・ランゲンフェルド
6(3):新崎涼子
7(7):永吉理恵
8(5):倉成真子
9(9):衣笠久美
FP(1):染谷美佳
※テーブルスコア←
※試合の概要は以下に
【1回表:Honda~0点】
初回、2番の大橋がレフト前にクリーンヒットを放つも無得点。続く3番にあがった田中が中途半端な打撃で止めたバットにボールが当たりピッチャーフライになってしまったのが痛かった。やはり開幕と言うことで気負いすぎたか。
<走塁では自慢の足を披露する機会がなかった大橋。しかし4回の守備ではライトファールフライを俊足を飛ばして好捕>
【1回裏~5回表:Honda、デンソー~0点】
Hondaのサラ・パウリー、デンソーの染谷美佳両先発投手の好投で4回を終わって0-0。2安打のHondaに対してノーヒットのデンソーと、ここまではむしろ互角以上にHondaが押している試合であったが、しかし5回ある一つのプレーで流れが完全にデンソーになってしまう。
<4回までは息詰まる投手戦を演じたパウリー、染谷の両投手>
<デンソーは4回を終わってノーヒット>
【5回裏:デンソー~5点】
この回先頭の九番衣笠がしぶとくレフト前に弾き返しチーム初ヒットを放つと、一番に返って増山が揺さぶりながらも最後はスラップでレフトにクリーンヒットでチャンスを広げる。
ここで試合を決めた大きなプレーがあった。続く2番松本がファースト前にキッチリと送りバントをするが、この打球を処理した田中が一塁へ送った送球がやや左にそれる。一塁カバーが身長の低い中村だったことも災いし、足がベースからわずかに離れてセーフ。前の回までノーヒットだったデンソーだが、この回の勢いや流れからするとHondaの守備のミスから満塁としたこの時点で勝負はあったのかもしれない。来日間もないパウリーと島崎の急増バッテリー間は二人の間の呼吸を合わせるどころかサインの確認すらままならない状況だったようで、冷静に場面を想定してリードをする余裕などなかっただろう。一度火がついたこの強力打線を抑えるにはあまりにもバッテリー間のコミュニケーション不足だったようで、結局は今泉、伊藤、ランゲンフェルドの3人に揃って移籍後初ヒット初タイムリーを浴び新崎にもスクイズを決められ一挙に5点を奪われてしまう。
<1死から九番衣笠がチーム初ヒットを放つと一番増山もレフト前に>
<松本の一塁前バントを田中が痛恨の送球ミスで満塁に>
<その満塁の場面で新クリーンアップの3人、今泉、伊藤、ランゲンフェルドが連続タイムリー>
【6回裏:デンソー~2点】
5回に続いて増山のヒットでチャンスを作るとまたしても今泉、伊藤の移籍組がタイムリーで駄目押しの2点が加わる。
【7回表:Honda~0点】
結局最終回も島崎、芝﨑、中村が三振で計12三振。染谷の好投と打線の爆発で優勝を狙うデンソーはこれ以上ない好スタートを切った。
【強力補強打線の中で異彩を放つ生え抜きの松本、増山、衣笠】
確かに今泉、伊藤、ランゲンフェルドという移籍してきた3人のクリーンアップで6打点をあげて試合を決めたデンソーだが、その大量点を演出したのは紛れもなくデンソー生え抜きの3選手だった。
初回ストライクの入らないHonda先発パウリーが先頭の増山を歩かせ二番松本にもスリーボール。当然松本は次は手を出さないがここからポンポンとストライクが入りカウントは3ボール2ストライク。待っている間に逆に追い込まれてしまったわけだが、このカウントから苦もなく完璧な送りバントを決めてしまうのが松本の松本たる所以。3回裏にも、先頭の増山が出塁すると続く松本は確実にゴロを転がして増山を二塁に進めている。
そして大量点を奪った5回裏。先頭の九番衣笠、一番増山がヒットで出て1死一二塁とチャンスを作ると打席には二番の松本。バントをするにしても三塁フォースアウトだけは絶対に避けなければいけないこの場面で、松本がやったのは「初球をフルスイングでの空振り」だった。恐らくこの“演技”の空振りで、さすがにHondaも「打ってくる」と騙されたはずはではないだろうが、しかしやはりこれをやっておくことでHondaの一塁手田中のスタートを「半歩」遅らせることが出来る。その半歩が1点を争う状況では非常に大きな意味を持つわけであり、そしてこの場面ではさらに微妙にHondaの守りに影響し、結果的には一塁手田中の送球ミスとその後の怒濤の4連続タイムリーへと繋がって行ったのではないだろうか。もちろんだからと言ってどんなチームでも誰でも選択出来る作戦ではない。初回に初対戦のパウリー相手にツーストライクからでも簡単に送りバントを決められたように、前提条件として松本のようなバントの技術があってこそできること。どんな状況でも確実に仕事をしてくれるこんな選手がいれば、ベンチとしても作戦の幅は飛躍的に広がるだろう。
その松本と並んで大量点を演出したのが一番の増山。2回のピッチャーゴロエラーも投手左、方向としてはショートの前に確実に緩いゴロを転がしたものでヒットにしてもおかしくない嫌らしい打球だった。そのエラーも含めて全4打席で出塁。俊足増山が塁に出ることによる相手へのプレッシャーは相当大きいはずだ。そしてもう一人が九番の衣笠。4回まで無安打に抑えられていたデンソーの5回の大量点も、元を辿れば九番衣笠のチーム初ヒットからスタートしている。強力クリーンアップを手に入れたデンソー打線の前を打つこの3人がしっかり仕事をすれば、やはり今年は12チーム最強の打線になるかも知れない。
<初球をフルスイングで揺さぶっておいて次にしっかり送りバント。もちろん野手が出てくればもう一度フルスイングで強い打球も打てる。何でも出来る松本>
【本格的シーズンスタートは次から】
震災の影響で直接的に被害が出たHonda。TOETECKほどではないにしても寮にヒビが入ったりその後も大きな余震では屋外に避難を強いられたりと、選手達は決して言い訳にはしないだろうが明らかに精神的ダメージを引きずっての開幕戦だっただろう。
そして新外国人選手として期待したラッピンが来日していないなど新チームの体勢も整わないままでの開幕で、この試合でも捕手島崎とパウリーが試合中にサインの確認を行うなど基本的コミュニケーションすら詰め切れていない見切り発車だったことが伺えた。
ラッピンが来日していない理由に関しての真の理由はわからないが、恐らく震災や原発事故の影響であり、それが理由なら、東京から脱出する(馬鹿な)日本人もいる現状を考えるとアメリカ人であるラッピンが東北に近い栃木県のチームに来日しない(できない)のは致し方ないなと思わざるを得ない。それより逆にギリギリでも開幕に併せて来日してくれたパウリーに対して本当に頭が下がるというか、一ソフトボールファンとして心から感謝したい。
そんな感じで見切り発車で出発し、大差で負けてしまったHondaだが、正直その相手がデンソーであったことは不幸中の幸いかも知れない。今年のデンソーはとにかく補強に成功して見違えるように強くなったチームで、他の強豪にも勝ち続けて上位でリーグ戦を抜けてくれたとすれば今日の大差負けもそんなに痛くは響いてこない。それに結果的には大差だったがワンチャンスに畳みかけられたような感じで、いつものHondaのしょうもない守備のイージーミスさえ克服していればパウリーなら互角に戦えると手応えを感じたのではないだろうか。
いくら染谷投手が良かったからとはいえ余りにも三振しすぎなところが問題だが、ただそれでもこのチームにとって2011年のシーズンが本格的にスタートするのは次から。打力のある新人も入り、平林も大橋も武藤も村上もしっかりヒットを放っていたし(3~5番は寝てたがw)、6番にあがった又吉の振りも確実に鋭くなっていた。次節のトヨタ戦で彼女たちの成長の証をきっと見せてくれるだろう。